マカロニスープ

昨日の野菜スープにマカロニを入れる。
トマトジュースで作った野菜スープを飲んで、小林カツ代さんのマカロニスープを思い出した。

 

絵本や児童書を嗜む幼い私は、料理本も好きで、作らないくせによく母の本棚から引っ張り出して眺めていた。中でも特別だったのが、「小林カツ代の簡単おかず」だ。


料理本のフォーマットのひとつに、右ページの上に写真、下に解説メモ、左ページに作り方、というものがある。それが公式かはわからないけれど、似たフォーマットの本が何冊か家にあった。
小林カツ代の簡単おかずは、この解説メモ欄に、詩のような言葉で、その料理にまつわるエピソードが書かれているのだ。エピソードは様々で、時には「レシピにはあるピーマンをうっかり抜かして作ってしまった料理の写真が上になります」という旨のことが書かれていたりもする(虹色ガトー)

 

話はマカロニに戻る。スープを飲んだ私が、トマト味のマカロニスープと一緒に真っ先に思い浮かべたフレーズはこれだった。
「マカロニグラタン いいですね」
いや、これはマカロニグラタンのレシピだ。でもマカロニスープのエピソードは、確かスープと関係ない話だった。気になって本を開いた。チーズ入りマカロニスープのエピソードはこんな一文から始まる。
「まったく関係ない話」
やっぱり関係なかった。
エピソードは殆ど、友人と蕎麦屋に行った話で終わる。静かに上品に蕎麦を食べる友人とふわふわ蕎麦を食べる、緊張したひととき。このスープなら静かに飲める!と最後の2文でマカロニスープに意識が戻る。

 

文から見え隠れするおおらかさが魅力的で、私はカツ代さんのエピソード欄がとても好きだった。生産者が見える野菜じゃないけれど、作り手の人となりが見えるような料理本。特にこの本はリズミカルな文体を意識してあったので、よく音読して楽しんでいた。
この本の料理はタイトル通り作りやすくて、食卓にしばしば登場した。マカロニスープも大好きだった。


本のレシピを見たら、何となく作ったスープは作り方がほぼマカロニスープだった。最後の工程、マカロニを入れる手前まで。
マカロニを茹でて入れた。口には出さないけれど、エピソードの語句は今も思考の中で弾む。